症例報告

転移性癌との鑑別診断が困難だった類内膜境界悪性腫瘍の1例

伊藤しげみ¹　　　佐藤　郁郎¹　　　大友　圭子²
海法　道子²　　　山田　秀和²

（¹宮城県立がんセンター病理診断科，²同　婦人科）

要旨: 症例は40代女性。乳癌の術前CT画像で偶然に左卵巣腫瘍が発見された。切除された卵巣は弾性硬，割面は充実性で黄色調を呈した。組織学的に，管状─篩状構造を示す異型腺管が線維性間質を伴い増殖していた。当初乳癌の転移が疑われたが，追加切り出しで卵巣内膜症を見出し，更に内膜症関連腫瘍に共通する遺伝子異常を免疫染色で確認できたことから診断に至った。類内膜境界悪性腫瘍は稀なうえ，組織像の多彩性から時に転移性癌との鑑別が困難である。背景病変や併存癌を意識した十分なサンプリングと免疫染色パネルの活用が重要である

キーワード:ovary, endometrioid borderline tumor, metastatic cancer

A case of endometrioid borderline tumor which had difficulty in differential diagnosis with metastatic cancer

Shigemi Ito¹, Ikuro Sato¹, Keiko Ohtomo², Michiko Kaiho², and Hidekazu Yamada²

Departments of ¹Pathology and ²Gynecology Miyagi Cancer Center

（論文受付:2020年5月12日）

（採用決定:2020年11月5日）