症例報告

術前診断が困難であった硬化性肺胞上皮腫の多発例

八田 聡美   米元 菜採   伊藤 知美
樋口 翔平   今村 好章

   

(福井大学医学部附属病院病理診断科/病理部)

要旨: 硬化性肺胞上皮腫の多発例を報告する。患者は40歳代女性,9年前に検診で肺腫瘤影を指摘され,経過観察中に増大したため切除術が施行された。肉眼的には最大20 mm大までの多数の結節を認め,組織学的には淡明な細胞質を有する類円形細胞と,肺胞上皮に類似する腺管を形成する表層細胞の2種類の細胞からなる充実型・乳頭状型および硬化型の3パターンの組織像を認め,硬化性肺胞上皮腫と診断した。硬化性肺胞上皮腫は単発例でもしばしば術前診断が困難な腫瘍であり,生検などでは腫瘍細胞の2相性を確認することが重要である。

キーワード:lung, sclerosing pneumocytoma, multiple, case report


A case of multiple sclerosing pneumocytoma presenting with diffusely-scattered nodules in the left lung

Satomi Hatta, Natsumi Yonemoto, Tomomi Ito, Shohei Higuchi, and Yoshiaki Imamura

Devision of Diagnostic Pathology/Surgical Pathology, University of Fukui Hospital

(論文受付:2020年6月23日)

(採用決定:2020年10月5日)