症例報告

著明な細胞外粘液産生と印環細胞を伴った浸潤性小葉癌の1例

久保　千幸¹　　　松山　篤二¹　　　渡邉　沙織²
阿部ひかる²　　　石田　慎悟³　　　中野　龍治⁴
久岡　正典¹

（¹産業医科大学医学部第1病理学，²池友会新小文字病院検査科，³同　外科，
⁴池友会福岡和白病院病理診断科）

要旨: 患者は78歳女性。右乳腺内に分葉状で辺縁不整な造影効果に乏しい腫瘍がCT検査で認められ，粘液癌の術前診断で乳房切除術が施行された。組織学的に印環細胞の形態を示す腫瘍細胞が豊富な細胞外粘液を伴って結節状に増殖するとともに，脂肪の隔壁に沿って同腫瘍細胞が浸潤性小葉癌に相当する細胞と混在してみられ，いずれの細胞もE-cadherin陰性であったことより，浸潤性小葉癌の稀な亜型と考えられた。小葉癌においても細胞外粘液や印環細胞が稀ながら出現するため，粘液癌などとは的確に鑑別することが重要である。

キーワード:breast, lobular carcinoma, extracellular mucin, signet ring cell, histology

A case of invasive lobular carcinoma with prominent extracellular mucin production and signet-ring cells

Chisachi Kubo¹, Atsuji Matsuyama¹, Saori Watanabe², Hikaru Abe², Shingo Ishida³, Ryuji Nakano⁴, and Masanori Hisaoka¹

¹Department of Pathology and Oncology, School of Medicine, University of Occupational and Environmental Health
Departments of ²Laboratory and ³Surgery, Shin Komonji Hospital
⁴Department of Pathology, Fukuoka Wajiro Hospital

（論文受付:2020年4月20日）

（採用決定:2020年9月23日）