総　　説

胎児性腫瘍の病理診断と細胞像

井上　　健¹　　　福島　裕子^1,2

（¹大阪市立総合医療センター病理診断科，²大阪市立十三市民病院病理診断科）

要旨: 胎児性腫瘍は，器官形成を模倣する組織形態を示す代表的な小児がんであるが，全身各臓器に発生し，多種多様な組織型が含まれる。術前化学療法が施行されることも多く，小さな生検組織から，迅速で正確な診断を求められるが，病理診断に苦慮することも少なくない。本稿では，代表的な胎児性腫瘍の病理診断をめぐる諸問題を解説するとともに，病理組織所見と細胞像の対比を行い，術前診断における細胞診の応用について考察した。

キーワード:embryonal tumor, neuroblastoma, nephroblastoma, hepatoblastoma, cytology

Pathological diagnosis and cytological findings of embryonal tumors

Takeshi Inoue¹, and Hiroko Fukushima^1,2

¹Department of Pathology, Osaka City General Hospital
²Department of Pathology, Osaka City Juso Hospital

（論文受付:2020年9月15日）

（採用決定:2020年11月5日）