症例報告

馬尾に発生した放射線誘発性悪性末梢神経鞘腫瘍の1例

赤池　瑶子^1,2　　　堀田真智子²　　　伏見聡一郎²
小田　晋輔^2,3　　　内野かおり^1,2　　　和仁　洋治⁴

（¹倉敷中央病院病理診断科，²姫路赤十字病院病理診断科，
³鳥取県立中央病院病理診断科，⁴姫路赤十字病院臨床検査科）

要旨: 70代女性。14年前に子宮体癌に対し，全骨盤領域に放射線を照射された。両下肢痛と歩行困難を主訴とした。画像検査で第2腰椎より尾側の硬膜内腫瘍を指摘され，切除された。肉眼的に出血を伴う白色の腫瘍で，組織学的には壊死を伴い，均一な紡錘形細胞が束状に増殖していた。免疫染色で，S-100が部分的に陽性で，H3K27me3は陰性であった。放射線誘発性の馬尾発生悪性末梢神経鞘腫瘍と診断した。馬尾発生は極めて稀であるが，組織学的な所見に加えて，放射線治療歴の確認とH3K27me3の免疫染色が診断に有用である。

キーワード:cauda equina, malignant peripheral nerve sheath tumor, radiation

A case of radiation-induced malignant peripheral nerve sheath tumor of the cauda equina

Yoko Akaike^1,2, Machiko Hotta², Soichiro Fushimi², Shinsuke Oda^2,3, Kaori Uchino^1,2, and Yoji Wani⁴

¹Department of Anatomic Pathology, Kurashiki Central Hospital
Departments of ²Anatomic Pathology and ⁴Clinical Pathology, Japanese Red Cross Society Himeji Hospital
³Department of Pathology, Tottori Prefectural Central Hospital

（論文受付:2020年5月2日）

（採用決定:2020年6月29日）