症例報告

胃癌と大腸癌の既往症例に生じたglandular myxomaの1例

北村　　悟¹　　　山本真由子²　　　脇山　英丘²
岡村　明治¹　　　横崎　　宏³　　　今井　幸弘¹

（¹加古川中央市民病院病理診断科，²同　心臓血管外科，
³神戸大学大学院医学研究科病理学講座病理学分野）

要旨: 腺管を形成した心臓粘液腫はglandular myxoma（GM）と呼ばれる。今回，胃癌と大腸癌の既往症例に生じたGMの1例を経験したので報告する。症例は80代，男性。左房内腫瘍摘除術を施行した。肉眼的に，平滑な亜有茎性腫瘤で，内部に複数の嚢胞構造がみられた。組織学的に典型的粘液腫像と嚢胞内の粘液上皮を認め，異型や核分裂像は認めず，p53の過剰発現はなかった。既往の胃癌と大腸癌でp53の過剰発現を認め，既往の胃癌と大腸癌の転移は否定的と判断した。臨床所見を合わせ，GMと診断した。本症例でp53がGMと転移性腺癌の鑑別に有用であった。

キーワード:left atrium, glandular myxoma, adenocarcinoma, p53

A case of the glandular myxoma in the left atrium

Satoru Kitamura¹, Mayuko Yamamoto², Hidetaka Wakiyama², Akiharu Okamura¹, Hiroshi Yokozaki³, and Yukihiro Imai¹

¹Departments of ¹Surgical Pathology and ²Cardiovascular Surgery, Kakogawa Central City Hospital
³Division of Pathology, Department of Pathology, Kobe University Graduate School of Medicine

（論文受付:2020年2月21日）

（採用決定:2020年6月22日）