症例報告

嫌色素性腎細胞癌・オンコサイトーマ様亜型と考えられた1例

黒江　崇史^1,4　　　伊藤　慎治¹　　　岡根谷利一³
長嶋　洋治⁵　　　深山　正久^4,6　　　藤井　丈士²

（¹国家公務員共済組合連合会虎の門病院病理診断科，²国家公務員共済組合連合会虎の門病院分院病理診断科，
³国家公務員共済組合連合会虎の門病院泌尿器科，⁴東京大学大学院医学系研究科病因・病理学専攻人体病理学，⁵東京女子医科大学病院病理診断科，
⁶総合病院国保旭中央病院臨床病理科・遠隔病理診断センター）

要旨: 症例は68歳女性。健康診断で偶然発見された左腎腫瘍に対して，腎部分切除術が施行された。組織学的に，好酸性顆粒状細胞質と中心性類円形核を持つ腫瘍細胞が，管腔状，嚢胞状に増殖しており，腎オンコサイトーマに類似していた。しかし免疫組織化学的に，Cytokeratin7（CK7）がびまん性に強陽性を示し，嫌色素性腎細胞癌のオンコサイトーマ様亜型として，近年報告されている腫瘍と考えられた。本亜型は，嫌色素性腎細胞癌としての生物学的特性を示し，腎オンコサイトーマの重要な鑑別疾患となる。

キーワード:kidney, chromophobe renal cell carcinoma, oncocytic variant, renal oncocytoma, low-grade oncocytic tumor of kidney

An oncocytic variant of chromophobe renal cell carcinoma:a case report

Takashi Kuroe^1,4, Shinji Ito¹, Toshikazu Okaneya³, Yoji Nagashima⁵, Masashi Fukayama^4,6, and Takeshi Fujii²

¹Departments of Pathology and ³Urology, Toranomon Hospital
²Department of Pathology, Toranomon Hospital Kajigaya
⁴Department of Pathology, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo
⁵Department of Pathology, Tokyo Women’s Medical University Hospital
⁶Department of Pathology, Asahi General Hospital

（論文受付:2019年12月2日）

（採用決定:2020年4月13日）