症例報告

脾腫で発見され急速な乳酸アシドーシスを呈した悪性リンパ腫の1剖検例

岡　　佑香¹　　　鈴木　　理¹　　　遠藤　豪一²
今野　　修²　　　橋本　優子¹

（¹福島県立医科大学病理病態診断学講座，²福島赤十字病院外科）

要旨: 70代後半，男性。呼吸困難，発熱を主訴に受診し入院となった。血清IL-2Rが高値で，CT検査では脾腫を指摘された。悪性リンパ腫の診断目的で脾臓摘出術を施行されたが，術後6日に著明な乳酸アシドーシスを発症し翌日永眠された。脾臓はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断された。剖検所見では，リンパ腫細胞は膵周囲および傍大動脈リンパ節，肝，腎，副腎，骨髄に浸潤し，特に肝浸潤が高度であった。乳酸の蓄積は，腫瘍量の増大に伴うWarburg効果と腫瘍進展に伴う肝細胞自身の乳酸の代謝障害に起因することが推定された。

キーワード:malignant lymphoma, lactic acidosis, liver infiltration, Warburg effect

An autopsy case of rapid lactic acidosis induced by malignant lymphoma with splenomegaly

Yuka Oka¹, Osamu Suzuki¹, Goichi Endo², Osamu Konno², and Yuko Hashimoto¹

¹Department of Diagnostic Pathology, Fukushima Medical University
²Department of Surgery, Fukushima Red Cross Hospital

（論文受付:2019年10月6日）

（採用決定:2020年3月17日）