総　　説

刑事司法における病理診断医の役割
∼診療関連死への対応のために∼

小谷　泰一

（京都大学大学院医学研究科法医学講座）

要旨: 医療も刑事司法の対象とされる現行の法体系のもとでは，病理診断医も診療関連死に備えた心の準備を求められる。そこで本稿では法医学実務で垣間みられた警察官等の職業意識や刑事司法のあり方を伏線にして，診療関連死を担当したときの病理診断医としての意識の持ち方や役割について述べる。まず，警察官がくることイコール“事件”と考える必要はない。そして，病理診断医の役割は解剖で「事実」を確認すること，そしてその「事実」を医学の専門家ではない司法関係者や裁判員に分かりやすく説明することである。

キーワード:Medical care-related death, criminal justice system, diagnostic pathologist, autopsy

Diagnostic pathologists help police and judicial officials make the right decision by providing intelligible explanations related to medical care-related death cases

Hirokazu Kotani

Department of Forensic Medicine, Kyoto University Graduate School of Medicine

（論文受付:2019年11月1日）

（採用決定:2020年1月4日）