症例報告

びまん性肝転移から急性肝不全に至り剖検により肺原発と同定された小細胞癌の1剖検例

川井　将敬¹　　　望月　邦夫¹　　　大澤玲於奈²
中山　康弘³　　　榎本　信幸³　　　近藤　哲夫¹

（¹山梨大学医学部人体病理学講座，²武蔵野赤十字病院消化器科，³山梨大学医学部内科学講座第一教室）

要旨: 58歳男性。倦怠感を主訴に来院した。肝機能異常が発見され，CT，MRI，PET検査によりびまん性の肝腫大を認めた。診断目的に経頸静脈的肝生検を施行され，組織学的に神経内分泌癌と診断された。その後，急速に肝不全が進行し約2ケ月の経過で死亡した。剖検で肺小細胞のびまん性肝転移および，諸蔵器，リンパ節への転移を認めた。本例は生前生検により神経内分泌癌と診断されたが原発巣は同定されず，剖検で肺原発の小細胞癌と判明した症例である。びまん性肝腫大の原疾患同定に経頸静脈的肝生検が有用であると考えられた。

キーワード:small cell carcinoma, lung cancer, diffuse liver metastasis, transjugular liver biopsy

An autopsy case of rapidly progressive hepatic failure caused by diffuse infiltration of small cell carcinoma confirmed pulmonary origin in autopsy

Masataka Kawai¹, Kunio Mochizuki¹, Reona Osawa², Yasuhiro Nakayama³, Nobuyuki Enomoto³, and Tetsuo Kondo¹

¹Department of Pathology and ³First Department of Internal Medicine, Faculty of Medicine, University of Yamanashi
²Department of Gastroenterology, Japanese Red Cross Musashino Hospital

（論文受付:2019年4月20日）

（採用決定:2019年11月14日）