総　　説

副腎皮質腫瘍『悪性』の病理診断の現状
（副腎皮質癌の病理組織診断）

山�普@有人¹　　　渡辺　みか²　　　中村　保宏³
佐藤　文俊⁴　　　笹野　公伸^1,2

（¹東北大学大学院医学系研究科病理診断学分野，²東北大学病院病理部，³東北医科薬科大学医学部病理学教室，
⁴東北大学大学院医学系研究科難治性高血圧·内分泌代謝疾患地域連携寄附講座）

要旨：副腎皮質腫瘍は良性が多いが，稀ながら悪性例も経験される。一方，全ての外科病理診断の中でも腫瘍の悪性度を正確に評価する事が尤も困難な領域の一つであり，極めて専門性が高い診療，病理診断が求められる。副腎皮質腫瘍の良悪性の病理組織学的基準としては Weiss の基準が最も有用かつ汎用性の高い指標として知られてきたが，近年例外も少なからず報告されている現状がある。昨今の WHO分類2017やENSAT（European Network of Study for Adrenal Tumor）の診療ガイドライン（2018）の改訂に伴い，副腎皮質腫瘍における悪性度の概念や治療戦略は大きく変遷してきており，臨床医が病理医に求める腫瘍の悪性度の正確な評価は従来以上に大きなものとなってきている。そこで本稿では副腎皮質腫瘍における悪性度の評価並びに病理組織診断の変遷に注目し，特に形態学的特徴，免疫組織化学的評価，分子生物学的特徴に焦点を当て，最新の知見に基づき，副腎皮質腫瘍『悪性』の病理組織診断の現状を概説する。

キーワード:Adrenocortical carcinoma, Ki-67, Weiss, Adrenal glands

Update on histopathological diagnosis of adrenocortical malignancy

Yuto Yamazaki¹, Mika Watanabe², Yasuhiro Nakamura³, Fumitoshi Satoh⁴, and Hironobu Sasano^1,2

¹Department of Pathology and ⁴Division of Clinical Hypertension, Endocrinology and Metabolism, Tohoku University Graduate School of Medicine
²Department of Pathology, Tohoku University Hospital
³Division of Pathology, Faculty of Medicine, Tohoku Medical and Pharmaceutical University

（論文受付:2019年11月29日）

（採用決定:2019年12月16日）