症例報告

卵巣の小さな奇形腫の1例

工藤まどか¹　　　手島　伸一¹　　　岸　　宏久²

（¹湘南鎌倉総合病院病理診断部，²同愛記念病院病理部）

要旨: 50代女性，左卵巣原発の高異型度漿液性腺癌で子宮全摘·両側付属器切除術を受けた。右卵巣の検索で，5×4mmの奇形腫がみつけられた。同部には重層扁平上皮，甲状腺，軟骨などの3胚葉成分と，小型立方形の腫瘍細胞が管状，乳頭状，小充実性に増生する未分化な成分が認められた。免疫組織学的には未分化な成分の一部でOCT3/4が核あるいは細胞質に，c-KITが一部の細胞膜に陽性であった。本例は文献的に組織学的な記載がなされている最も小さな卵巣の奇形腫で，その発生初期の形態形成を考える上での貴重な症例と考えられた。

キーワード:ovary, teratoma, small, immature

A case report of small teratoma of the ovary

Madoka Kudo¹, Shinichi Teshima¹, and Hirohisa Kishi²

¹Department of Diagnostic Pathology, Shonan Kamakura General Hospital
²Department of Pathology, Douai Memorial Hospital

（論文受付　2019年2月27日）

（採用決定　2019年6月27日）