総　　説

咽喉頭表在性扁平上皮癌の病理診断

藤井　誠志

（国立がん研究センター先端医療開発センター臨床腫瘍病理分野）

要旨: NBI（Narrow band imaging:狭帯域内視鏡）の出現は，咽喉頭における表在性扁平上皮癌の発見と発声および嚥下という重要な生理機能を温存することを可能にする大きな治療革新を起こした。頭頸部領域では，粘膜筋板がないために壁深達度の概念はT因子に含まれておらず，広い上皮下層（粘膜下層）を細分類してリンパ節転移リスクを食道癌のように深達度レベル別に示すことができない。Tumor thicknessを深達度の代用として用いているが，縮小切除後のリンパ節郭清といった追加治療の可否を予測する因子の同定が課題のひとつである。本稿では咽喉頭表在性扁平上皮癌の病理診断について解説する。

キーワード:superficial type squamous cell carcinoma, IPCL （intra-papillary capillary loop）, NBI （narrow band imaging）, tumor thickness, invasive depth

Pathological diagnosis of superficial type squamous cell carcinoma of the pharyx and larynx

Satoshi Fujii

Division of Pathology, Exploratory Oncology Research & Clinical Trial Center, National Cancer Center

（論文受付　2019年8月1日）

（採用決定　2019年8月30日）