症例報告

消化管ミオパシーにより腹部コンパートメント
症候群を来たした全身性強皮症の1剖検例

久永　悦子¹　　　高山　佳泰¹　　　深井　泰守²
栗林　志行²　　　下山　康之²　　　茂木精一郎³
平戸　純子¹

（¹群馬大学医学部附属病院病理部·病理診断科，²同　消化器肝臓内科，³同　皮膚科）

要旨: 症例は50代男性。2年間原因不明の麻痺性イレウスがあり，死亡2か月前に皮膚生検により強皮症と診断された。死亡当日，定期受診で来院したが，腹痛を訴えた後まもなく外来で死亡した。剖検の結果，消化管の著明な拡張，横隔膜穿孔がみられた。食道から直腸までの消化管固有筋層の，内輪層あるいは外縦層に，交互に分節性の平滑筋の消失と線維化がみられた。これが，消化管壁の運動障害を引き起こし，腸管の著明な拡張，麻痺性イレウスの一因になったと考えられた。死因は腹部コンパートメント症候群，横隔膜穿孔による呼吸循環不全と考えられた。

キーワード:gastrointestinal tract, systemic sclerosis, myopathy of the gastrointestinal tract, abdominal compartment syndrome, rupture of diaphragm

Abdominal compartment syndrome due to gastrointestinal myopathy in a patient with systemic sclerosis:a case report

Etsuko Hisanaga¹, Yoshiyasu Takayama¹, Yasumori Fukai², Shikou Kuribayashi², Yasuyuki Shimoyama², Sei-ichiro Motegi³, and Junko Hirato¹

¹Clinical Departments of Pathology, ²Gastroenterology and Hepatology, and ³Dermatology, Gunma University Hospital

（論文受付:2019年1月30日）

（採用決定:2019年3月26日）