症例報告

転移性肝腫瘍の破裂をきたしたAFP産生胃癌の1剖検例

小島　伊織¹　　　桐山　諭和²　　　菊池　正和³
堀部　良宗¹

（¹社会医療法人宏潤会大同病院病理診断科，²社会医療法人明陽会成田記念病院病理診断科，
³社会医療法人宏潤会大同病院消化器内科）

要旨: α-fetoprotein（AFP）産生胃癌による転移性肝腫瘍が破裂をきたした1剖検例について報告する。患者は60代男性で，腹水貯留および肝外発育型の多発肝腫瘍がみられ，臨床的に肝細胞癌が疑われていた。死後剖検を行ったところ破裂した肝腫瘍のほか胃癌が認められ，胃癌の肝転移と判断した。胃癌は髄様で索状·管状に増殖し，免疫組織化学染色でAFPに陽性であった。肝外発育型を示し腫瘍破裂に至る転移性肝腫瘍はまれであるが，本例は発育が早く髄様の腫瘍であったため破裂をきたしたと考えられた。

キーワード:liver, metastatic tumor, rupture, α-fetoprotein （AFP）-producing gastric carcinoma, autopsy case

An autopsy case of AFP-producing gastric carcinoma with rupture of the metastatic liver tumor

Iori Kojima¹, Yuka Kiriyama², Masakazu Kikuchi³, and Yoshimune Horibe¹

Departments of ¹Pathology and ³Gastroenterology, Daido Hospital
²Department of Pathology, Narita Memorial Hospital