症例報告

嚢胞形成を伴った胸腺MALTリンパ腫の臨床病理学的検討

安藤　良太　　　小出　知美　　　伊藤　　藍
小南　理美　　　藤野　雅彦　　　伊藤　雅文

（名古屋第一赤十字病院病理部）

要旨: 胸腺MALTリンパ腫の5切除例を報告する。患者は3070歳代，男性1例，女性4例。いずれも無症状で，外科的切除のみで完全寛解が得られた。病理組織学的に，重層扁平上皮からなる嚢胞の形成とリンパ組織の増生がみられ，反応性濾胞辺縁にリンパ腫細胞が増殖し，リンパ上皮性病変を形成していた。当初2例はリンパ濾胞過形成を伴う胸腺嚢胞と診断されていたが，再検討により MALT リンパ腫と診断した。胸腺MALTリンパ腫は稀とされるが，ときに過小診断される可能性があり，免疫染色を含めた十分な検討が望まれる。

キーワード:thymus, malignant lymphoma, MALT lymphoma

Clinicopathological features of primary thymic MALT lymphoma with multiple cysts

Ryota Ando, Tomomi Koide, Ai Ito, Ayami Kominami, Masahiko Fujino, and Masafumi Ito

Department of Pathology, Japanese Red Cross Nagoya First Hospital

（論文受付:2019年1月23日）

（採用決定:2019年3月26日）