症例報告

篩骨洞腫瘤として出現したSMARCB1 （INI1）欠損鼻副鼻腔癌の1例

合田　直樹¹　　　羽賀　博典¹　　　住吉　真治¹
山田　洋介¹　　　家村　宜樹¹　　　三澤　晶子¹
中山理祐子¹　　　横尾　英明²

（¹京都大学医学部附属病院病理診断科，²群馬大学大学院医学系研究科病態病理学分野）

要旨: SMARCB1（INI1）欠損副鼻腔癌は，近年提案された副鼻腔癌の亜型の1つである。今回，篩骨洞発生の1例を呈示する。この腫瘍の本邦における報告はこれが最初である。30代前半の日本人女性に左篩骨洞腫瘍を認めた。内視鏡的腫瘍切除術が行われた。腫瘍は充実性ないしSchneiderian乳頭腫様構造を形成する単調な基底細胞様細胞から構成されていた。被覆する呼吸上皮に腫瘍細胞の Paget様進展も観察された。腫瘍細胞はSMARCB1の核発現が完全に喪失しSMARCB1遺伝子座のホモ接合型欠失を示した。正確な診断に至るには SMARCB1の免疫染色が必須である。

キーワード:ethmoid sinus, sinonasal carcinoma, SMARCB1 （INI1）, Pagetoid spreading, MLPA （Multiplex ligation-dependent probe amplification）

A case of SMARCB1 （INI1）-deficient sinonasal carcinoma presenting as an ethmoid mass

Naoki Goda¹, Hironori Haga¹, Shinji Sumiyoshi¹, Yosuke Yamada¹, Yoshiki Iemura¹, Akiko Misawa¹, Ryuko Nakayama¹, and Hideaki Yokoo²

¹Department of Diagnostic Pathology, Kyoto University Hospital
²Department of Pathology, Gunma University Graduate School of Medicine

（論文受付　2018年12月11日）

（採用決定　2019年1月29日）