症例報告

Warthin腫瘍に類似した形態を示す低悪性度粘表皮癌の1例

谷口　恒平¹　　　市村　浩一²　　　守都　敏晃³
高田　晋一⁴　　　小川　郁子⁵　　　吉野　　正⁶

（¹岡山大学病院病理診断科，²広島市立広島市民病院病理診断科，³岩国医療センター病理診断科，
⁴友愛記念病院病理診断科，⁵広島大学病院口腔検査センター，
⁶岡山大学大学院医歯薬学総合研究科腫瘍病理）

要旨: 30歳代，女性。左耳下腺腫瘍の診断で切除術が施行された。組織学的に被膜のない嚢胞状の病変であり，リンパ間質を伴って杯細胞様の細胞が増殖していた。Warthin腫瘍を疑う所見であったが，（1） 粘液細胞が広範囲にみられる点，（2）好酸性細胞が2列に配列する所見が明らかでない点，（3）浸潤がみられる点から，低悪性度粘表皮癌と診断した。切除から約10ケ月後にリンパ節転移が指摘された。本例はWarthin腫瘍に類似した形態を示す低悪性度粘表皮癌であり，良性腫瘍であるWarthin腫瘍との鑑別が重要である。

キーワード:salivary gland, Warthin tumor, mucoepidermoid carcinoma

A case report of Warthin-like low grade mucoepidermoid carcinoma

Kohei Taniguchi¹, Koichi Ichimura², Toshiaki Morito³, Shinichi Takada⁴, Ikuko Ogawa⁵, and Tadashi Yoshino⁶

¹Department of Pathology, Okayama University Hospital
²Department of Pathology, Hiroshima City Hiroshima Citizens Hospital
³Department of Pathology, NHO Iwakuni Clinical Center
⁴Department of Pathology, Yuai Memorial Hospital
⁵Center of Oral Clinical Examination, Hiroshima University Hospital
⁶Department of Pathology, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences

（論文受付　2018年10月3日）

（採用決定　2019年1月21日）