症例報告

先行する肝膿瘍から急速に進展し，敗血症を合併したClostridium perfringensによる肝ガス壊疽の1剖検例

原田　　直¹　　　松嶋　　惇^1,2　　　岸本　　充³
高野　重紹⁴　　　大塚　将之⁴　　　中谷　行雄^1,2

（¹千葉大学医学部附属病院病理診断科，²千葉大学大学院医学研究院診断病理学，³同　病態病理学，　⁴千葉大学医学部附属病院肝胆膵外科）

要旨: 54歳女性。遠位胆管癌に対して膵頭十二指腸切除術施行後，総肝動脈からの出血に対してコイル塞栓術が施行された。その後肝膿瘍が発生し経過観察されていたが，術後35日目に急変し，5時間後に死亡した。剖検では肝臓および腹部臓器に空胞形成がみられ，全身性にグラム陽性桿菌を認めた。術後10日目の血液培養結果と総合してClostridium perfringensによる肝ガス壊疽および敗血症で死亡したと考えた。本症例は侵襲的手技の既往や先行する肝膿瘍が特徴であった。肝ガス壊疽は稀だが致死的な疾患であり，組織像や発生機序も含めて認識する必要がある。

キーワード:liver, gas gangrene, abscess, Clostridium perfringens

An autopsy case of rapidly progressive hepatic gas gangrene caused by Clostridium perfringens with a preceding liver abscess and a complication of septicemia

Nao Harada¹, Jun Matsushima^1,2, Takashi Kishimoto³, Shigeaki Takano⁴, Masayuki Ootsuka⁴, and Yukio Nakatani^1,2

Departments of ¹Pathology and ⁴General Surgery, Chiba University Hospital
Departments of ²Diagnostic Pathology and ³Molecular Pathology, Chiba University Graduate School of Medicine

（論文受付　2018年1月9日）

（採用決定　2018年9月21日）