総　　説

血栓症／塞栓症と臓器障害

松林　　純^1,2　　　若狹　朋子³　　　柳井　広之⁴

（¹東京医科大学人体病理学分野，²東京医科大学病院病理診断科，³近畿大学医学部奈良病院臨床検査部，⁴岡山大学病院病理診断科）

要旨: 血栓症／塞栓症は全身臓器の中で生命にかかわる重要な臓器にも病変を形成することが多いためしばしば致死的である。このため，本症は病理解剖においても，病理医が常に鑑別診断として念頭に置かなければならない重要な病態の一つである。本症は，症例毎に多彩な臨床症状を示すことから，それぞれの病態に特徴的な所見を抽出し正確に診断することが求められる。本稿では，本症の中で臨床病理学的に重要な病態について疾患概念を説明し，病理学的に本症と臓器障害との関係性を主体に紹介する。

キーワード:Thrombosis/embolism, Trousseau’s syndrome, cholesterin crystal embolism, infective endocarditis, amniotic fluid embolism

Thrombosis/embolism and organ dysfunction

Jun Matsubayashi^1,2, Tomoko Wakasa³, and Hiroyuki Yanai⁴

¹Department of Anatomic Pathology, Tokyo Medical University
²Diagnostic Pathology Division, Tokyo Medical University Hospital
³Department of Diagnostic Pathology, Nara Hospital, Kindai University Faculty of Medicine
⁴Department of Pathology, Okayama University Hospital

（論文受付　2018年8月31日）

（採用決定　2018年9月28日）