症例報告

顎下腺に発生した高度扁平上皮化生を伴う基底細胞腺癌の1例

伊豆　麻未　　　本間　　琢　　　石毛　俊幸
羽尾　裕之

（日本大学医学部病態病理学系人体病理学分野）

要旨: 40代女性。右側顎下腺部腫瘤を認め，摘出術を施行。病変は被膜を持つ境界明瞭な充実性腫瘍であった。組織学的には，基底細胞類似の腫瘍細胞が主にシート状，胞巣状を成して増殖し，顕著な扁平上皮化生を示していた。また，一部に上皮の二相性が不明瞭な腺腔および嚢胞様構造を認めた。腫瘍細胞に異型は目立たず，脈管侵襲や周囲組織への浸潤は認めなかったが，核分裂像が多少散見された。筋上皮系腫瘍との鑑別，また，腫瘍の悪性度が問題であったが，形態および免疫組織化学的所見から最終的に基底細胞癌を考えた。

キーワード:Submandibular gland, basal cell adenocarcinoma, myoepithelial carcinoma, borderline malignancy

A case of basal cell adenocarcinoma with prominent squamous metaplasia of submandibular gland

Asami Izu, Taku Homma, Toshiyuki Ishige, and Hiroyuki Hao

Division of Human Pathology, Department of Pathology and Microbiology, Nihon University School of Medicine

（論文受付　2018年2月19日）

（採用決定　2018年5月10日）