症例報告

交通外傷による脾破裂を契機として診断された伝染性単核球症の1例

大日方謙介　　　野田　修平　　　高田　温子
金子　有子　　　中里　宜正　　　Tsengelmaa Jamiyan
小島　　勝　　　黒田　　一　　　今井　康雄

（獨協医科大学病理診断学講座）

要旨: 脾破裂は，Epstein-Barr virus （EBV）関連リンパ増殖疾患である伝染性単核球症（infectious mononucleosis:IM）に比較的よくみられる合併症である。今回，我々は交通事故によると思われた脾破裂に対し病理組織学的検討を加えることでIMと診断された1症例を経験した。症例は16歳男性で，バイク事故により救急搬送され来院，脾破裂を認め摘脾が行われた。病理組織学的にこの脾臓には濾胞間の拡大が認められ，同部位には小∼中型リンパ球，免疫芽球を含む大型リンパ球，形質細胞，少数の顆粒球，組織球など多彩な細胞浸潤が認められたほか，脾柱の血管壁に小∼大型のリンパ球の浸潤が認められた。これらの所見はIMの脾病変として矛盾せず，またin situ hybridization法で濾胞間にEBV陽性の大型リンパ球が散見されたことにより，IMであるとの診断に至った。

キーワード:Spleen, infectious mononucleosis, Epstein-Barr virus, Splenic rupture

A case of infectious mononucleosis, diagnosed by splenic rupture due to traffic injury

Kensuke Ohikata, Shuhei Noda, Atsuko Takada, Yuko Kaneko, Yoshimasa Nakazato, Tsengelmaa Jamiyan, Masaru Kojima, Hajime Kuroda, and Yasuo Imai

Department of Diagnostic Pathology, Dokkyo Medical University

（論文受付　2017年12月1日）

（採用決定　2018年3月8日）