症例報告

40代女性に発生した後腹膜原発卵黄嚢腫瘍の1例

大谷　知之^1,3　　　若狹　朋子¹　　　大林　千穂³
金山　清二²　　　大井　豪一²　　　太田　善夫¹

（¹近畿大学医学部奈良病院病理診断科，²同　婦人科，³奈良県立医科大学附属病院病理診断科）

要旨: 40代女性。腹部膨満を主訴とし，骨盤内腫瘍·血清AFP高値を指摘され，当院で切除術が施行された。病変は肉眼的に出血壊死を伴う白色充実性腫瘍であり，組織学的に淡明な細胞質を有する腫瘍細胞が網状·小嚢胞状，充実状，乳頭状など多彩なパターンを呈していた。免疫組織化学染色でSALL4陽性，AFP一部陽性であった。同時にPAX8一部陽性，HNF1β陽性であり，患者年齢·発生部位·組織形態を併せ明細胞癌との鑑別が問題となったが，核形態や多彩な組織像，CK7陰性，EMA陰性の所見も参考にし，最終的に後腹膜原発卵黄嚢腫瘍と診断した。40歳以上の患者に発生する卵黄嚢腫瘍は明細胞癌と慎重に鑑別される必要がある。

キーワード:retroperitoneum, yolk sac tumor, extragonadal, perimenopausal, ovary

A case of retroperitoneal yolk sac tumor in a woman in her fifth decade

Tomoyuki Ohtani^1,3, Tomoko Wakasa¹, Chiho Ohbayashi³, Seiji Kanayama², Hidekazu Oi², and Yoshio Ohta¹

¹Departments of Diagnostic Pathology, and ²Obstetrics-Gynecology, Nara Hospital, Faculty of Medicine, Kindai University
³Department of Diagnostic Pathology, Nara Medical University

（論文受付　2017年6月30日）

（採用決定　2017年10月20日）