症例報告

リンパ上皮性嚢胞から発生した扁平上皮癌で，転移性腫瘍との鑑別に苦慮した1例

川崎　桂輔¹　　　土屋奈々絵²　　　村山　貞之²
加留部謙之輔³

（¹大阪大学大学院医学系研究科病態病理学講座，²琉球大学大学院医学研究科放射線診断治療学講座，³同　細胞病理学講座）

要旨: リンパ上皮性嚢胞から発生した扁平上皮癌の症例を報告する。症例は左頸部腫脹を主訴に受診した70代の女性。弾性硬な腫瘤で，画像検査で嚢胞性腫瘤を認めた。吸引細胞診では異型上皮細胞を認め，癌の頸部リンパ節転移などが疑われ病変切除された。組織学的に腫瘤は重層扁平上皮で被覆された嚢胞性病変で，異型の乏しい上皮細胞が認められた一方，一部で異型が増強し間質に浸潤する所見もみられた。浸潤する癌細胞はp53陽性，p16陰性であった。他の部位に腫瘍は認められず，既存のリンパ上皮性嚢胞から発生した扁平上皮癌と診断した。

A case of squamous cell carcinoma arising from the lymphoepithelial cyst distressing whether it is primary or metastasis

Keisuke Kawasaki¹, Nanae Tsuchiya², Sadayuki Murayama², and Kennosuke Karube³

¹Department of Pathology, Osaka University Graduate School of Medicine
²Department of Radiology and ³Division of Pathology and Cell Biology, Graduate School and Faculty of Medicine, University of the Ryukyus

（論文受付　2017年4月26日）

（採用決定　2017年7月10日）