症例報告

乳腺に発生した腺様嚢胞癌の2例

田原沙佑美¹　　　浦野　　誠¹　　　河合　遼子¹　　　中川　　満¹　　　岡部　麻子¹　　　桐山　諭和¹　　　塚本　徹哉¹　　　引地　理浩²　　　内海　俊明²　　　黒田　　誠1

（¹藤田保健衛生大学医学部病理診断科，²同　乳腺外科）

要旨: 稀な乳腺腺様嚢胞癌の2例を報告する。（症例1）80代女性。検診にて左乳房の腫瘤を指摘され，乳房部分切除術を施行した。腫瘍は主に真腺腔と偽腺腔から成る篩状構造を呈して浸潤増殖しており，定型的な腺様嚢胞癌であった。（症例2）70代女性。右乳房腫瘤に対しての針生検で浸潤性乳管癌の診断のもとに，乳房全摘術を施行した。腫瘍は充実性で明瞭な腺腔構造に乏しかったが，核の形態や特徴的な配列から充実型腺様嚢胞癌と診断した。浸潤性乳管癌と腺様嚢胞癌は予後と治療方針が異なり，術前術後における両者の組織学的診断は重要である。

Two cases of adenoid cystic carcinoma of the breast

Sayumi Tahara¹, Makoto Urano¹, Ryoko Kawai¹, Mitsuru Nakagawa¹, Asako Okabe¹, Yuka Kiriyama¹, Tetsuya Tsukamoto¹, Masahiro Hikichi², Toshiaki Utsumi², and Makoto Kuroda¹

Departments of ¹Diagnostic Pathology and ²Breast Surgery, Fujita Health University, School of Medicine

（論文決定　2017年2月27日）

（採用決定　2017年3月24日）