症例報告

乳腺過誤腫内に発生した浸潤性乳癌の1例

高柳奈津子1,2   兼子  耕2   山下 純男3   百瀬 修二1,2   田丸 淳一1

1埼玉医科大学総合医療センター病理部,2深谷赤十字病院病理部,3こくさいじクリニック)

要旨: 症例は50歳女性。徐々に増大する右乳房腫瘤と右腋窩腫瘤を主訴に来院した。術前の精査で乳腺過誤腫内癌と腋窩リンパ節転移が疑われ,右乳房全摘出術および腋窩リンパ節郭清が施行された。手術検体では,乳房内に14 cm大の境界明瞭な腫瘤を認め,一部に不整形の充実成分を伴っていた。組織学的に,腫瘤は脂肪組織と乳腺組織から構成される過誤腫で,不整形の充実成分は浸潤性乳癌の所見であった。乳腺過誤腫の中に癌が発生することは稀で,さらに本例では興味深いリンパ管侵襲の分布を示しており,示唆に富む貴重な症例と考えられる。

キーワード: breast, hamartoma, invasive carcinoma


Invasive carcinoma arising in a mammary hamartoma:a case report

Natsuko Takayanagi1,2, Kou Kaneko2, Sumio Yamashita3, Shuji Momose1,2, and Jun-ichi Tamaru1

1Department of Pathology, Saitama Medical Center, Saitama Medical University
2Department of Pathology, Fukaya Red Cross Hospital
3Kokusaiji Clinic

(論文受付 2016年8月1日)

(採用決定 2017年2月28日)