症例報告

基底細胞腺腫，篩状亜型の1例

平木　　翼　　　山田　壮亮　　　霧島　茉莉　　　後藤　優子　　　北薗　育美　　　畑中　一仁　　　東　美智代　　　谷本　昭英

（鹿児島大学学術研究院医歯学域医学系先進治療科学専攻腫瘍学講座病理学分野）

要旨: 40代，男性。右耳下腺部に20 mm大の可動性良好な腫瘤を認め，摘出術が施行された。周囲とは境界明瞭で，一部に菲薄な線維性被膜を認めた。病変の大部分は基底細胞様細胞が大小の篩状構造を呈し増殖しており，胞巣内には好酸性細胞質を有する導管上皮様細胞からなる真の腺腔も散見された。腺様嚢胞癌や基底細胞腺癌等，篩状構造を示す悪性上皮性唾液腺腫瘍との鑑別が問題となったが，肉眼的に境界明瞭な病変であり，組織学的にも明らかな浸潤性増殖や神経侵襲，脈管侵襲を認めない事から基底細胞腺腫，篩状亜型と診断した。

キーワード: Salivary gland, basal cell adenoma, cribriform variant, adenoid cystic carcinoma

A case of basal cell adenoma, cribriform variant

Tsubasa Hiraki, Sohsuke Yamada, Mari Kirishima, Yuko Goto, Ikumi Kitazono, Kazuhito Hatanaka, Michiyo Higashi, and Akihide Tanimoto

Department of Pathology, Division of Oncology, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Kagoshima University

（論文受付　2016年11月25日）

（採用決定　2017年1月26日）