症例報告

剖検にて卵黄嚢腫瘍と確定できた20代女性の前縦隔悪性胚細胞腫瘍の1例

武田宏太郎¹　　　工藤まどか¹　　　手島　伸一¹　　　杉本　栄康²　　　井上　裕美³

（¹湘南鎌倉総合病院病理診断科，²同　呼吸器内科，³同　産婦人科）

要旨: 成人発症の前縦隔胚細胞腫瘍には明らかな性差が存在し，悪性の大部分は男性発症である。今回我々は，剖検にて卵黄嚢腫瘍と確定できた20代女性の前縦隔悪性胚細胞腫瘍の1例を経験した。剖検では，前縦隔内を浸潤性に増殖し，大動脈，肺動脈，気管を圧排する10cm大の悪性胚細胞腫瘍と，肺，脳，肝，脾，腎，副腎，皮膚および気管周囲などのリンパ節に転移を認めた。免疫組織学的には，AFP陽性，SALL4陽性，OCT4陰性，CD30陰性で，卵黄嚢腫瘍と診断した。文献的考察を加え，ここに報告する。

キーワード: anterior mediastinum, malignant germ cell tumor, yolk sac tumor, adult female, autopsy

An autopsy case of anterior mediastinal yolk sac tumor in adult female

Kotaro Takeda¹, Madoka Kudo¹, Shin-ichi Teshima¹, Hideyasu Sugimoto², and Hiromi Inoue³

Departments of ¹Pathology, ²Pulmonary Medicine, and ³Obstetrics and Gynecology, Shonan Kamakura General Hospital

（論文受付　2016年8月24日）

（採用決定　2016年11月22日）