症例報告

低ガンマグロブリン血症を背景に発症した進行性多巣性白質脳症の1例

柴　　瑛介¹　　　澁谷　　亮¹　　　矢吹　　慶¹
原田　大史¹　　　内橋　和芳¹　　　松山　篤二¹
岡田　和将²　　　久岡　正典¹

（¹産業医科大学第1病理学，²同　神経内科学）

要旨: 症例は低ガンマグロブリン血症の既往がある50歳代の男性で，約半年前より呂律不良や右上下肢の脱力が出現し，MRIで左前頭葉皮質下白質に信号異常を指摘された。当初は脳梗塞が疑われ，保存的に加療されたが，次第に病勢の増悪を認めていた。開頭生検組織では，大小の融合する脱髄巣がみられ，核内封入体を有するオリゴデンドロサイトや異型アストロサイトを伴っていた。特徴的なウイルス感染細胞を同定できた稀な進行性多巣性白質脳症の1例を経験したため報告する。

キーワード: brain, progressive multifocal leukoencephalopathy, hypogammaglobulinemia, biopsy

A case of progressive multifocal leukoencephalopathy associated with hypogammaglobulinemia

Eisuke Shiba¹, Ryo Shibuya¹, Kei Yabuki¹, Hiroshi Harada¹, Kazuyoshi Uchihashi¹, Atsuji Matsuyama¹, Kazumasa Okada², and Masanori Hisaoka¹

Departments of ¹Pathology and Oncology and ²Neurology, University of Occupational and Environmental Health, Japan

（論文受付　2016年8月31日）

（採用決定　2016年10月31日）