症例報告

涙腺から発生したと考えられた導管癌の1例

田中　顕之¹　　　田中　健大¹　　　松本　　洋²
柳井　広之¹　　　吉野　　正¹

（¹岡山大学病院病理診断科，²同　形成外科）

要旨: 患者は60代男性。左眼窩内腫瘍に対して左眼窩内容物摘出術が施行された。摘出検体の割面では，眼窩後部に眼球浸潤を認めない白色充実性腫瘤を認めた。腫瘍は明瞭な核小体を持つクロマチンの粗造な核と好酸性の顆粒状細胞質を持ち，多形性を示す細胞からなり，面皰状壊死像を認めた。免疫組織化学染色ではHER2およびandrogen receptor陽性，GCDFP-15一部陽性であり，HE染色所見と併せて涙腺導管癌と診断した。涙腺導管癌は唾液腺導管癌と類似しており，高悪性度の腫瘍として認識しておく必要がある。

キーワード: lacrimal gland, ductal adenocarcinoma, androgen receptor, salivary duct carcinoma, case report

A case of ductal adenocarcinoma arising from the lacrimal gland

Noriyuki Tanaka¹, Takehiro Tanaka¹, Hiroshi Matsumoto², Hiroyuki Yanai¹, and Tadashi Yoshino¹

Departments of ¹Pathology and ²Plastic and Reconstructive Surgery, Okayama University Hospital

（論文受付　2016年4月4日）