症例報告

単房性嚢胞を形成した膵神経内分泌腫瘍の1例

井上　朋大¹　　　近藤　哲夫¹　　　望月　邦夫¹
大石　直輝¹　　　河西　一成¹　　　田原　一平¹
中澤　匡男¹　　　板倉　　淳²　　　藤井　秀樹²　　　加藤　良平¹

（¹山梨大学医学部人体病理学，² 同　第一外科学）

要旨: 生来健康の39歳女性。健診の腹部超音波検査にて膵に嚢胞性腫瘍を指摘され，当院外科を受診となった。CTおよびMRIにて膵尾部に単房性嚢胞性病変を認め，膵粘液性嚢胞性腫瘍が疑われたため膵尾部切除術が施行された。肉眼的には厚い線維性被膜を有する径6cmの単房性嚢胞であり，嚢胞壁には免疫染色にて神経内分泌マーカー，グルカゴンが陽性となる好酸性細胞の充実性増殖を認め，膵神経内分泌腫瘍と診断した。単房性嚢胞を形成する膵神経内分泌腫瘍は稀であるが，膵嚢胞性病変の鑑別診断の一つとして留意する必要がある。

キーワード: pancreas, cyst, neuroendocrine tumor, glucagon

Unilocular cystic neuroendocrine tumor of the pancreas:case report

Tomohiro Inoue¹, Tetsuo Kondo¹, Kunio Mochizuki¹, Naoki Oishi¹, Kazunari Kasai¹, Ippei Tahara¹, Tadao Nakazawa¹, Jun Itakura², Hideki Fujii², and Ryohei Katoh¹

Departments of ¹Pathology and ²Surgery, University of Yamanashi

（論文受付:2016年2月3日）

（採用決定:2016年5月2日）