総  説

特集「乳腺腫瘍の組織分類はどうあるべきか?」によせて

市原  周

(名古屋医療センター病理診断科)

要旨: 現在,日本では,世界の他の地域とは異なった乳癌分類が使用されている。その分類は,日本の病理学会ではなく乳癌学会によって1971年に発表されたもので,1984年にWHO第2版(1981年)が出版されると,それとの互換性を考慮して修正されたが,WHO第3版(2002年)と第4版に配慮した改訂はされなかった。従って,日本の乳癌分類はWHO第2版にもとづいた分類が日本で独自に進化したものと言える。その結果,最新のWHO分類と現在の国内分類と間に30年相当の「ガイドラインギャップ」が生じている。この状況を改善するために春の病理学会で企画されたシンポジウムがもとになり,この特集記事が企画された。日本でユニークな進化を遂げた分類の問題点と,それをとりまく現状を理解するために役立つことを願っている。

キーワード: WHO classification, JBCS classification, histological typing, grading, breast


What a histological classification of breast tumours should be?

Shu Ichihara

Department of Pathology, National Hospital Organization Nagoya Medical Center

(論文受付 2015年11月30日)

(採用決定 2015年12月21日)