症例報告

Segmental arterial mediolysisが疑われる胆嚢動脈の壁破綻により肝漿膜下血腫を来した1剖検例

一萬田正二郎^1,2　　　神宮　邦彦¹　　　佐野　健司¹
菅野　祐幸²

（¹信州大学医学部附属病院臨床検査部，²信州大学医学部病理組織学）

要旨: 70歳代男性。死亡前日に右側腹部痛が出現し，造影CTで胆嚢動脈周囲に血管外漏出像と腹腔内血腫を認めた。手術適応とならず，循環動態が悪化し死亡した。剖検では肝床部に10cm大の被膜下血腫を認め，腹腔内での破裂と胆嚢内穿破がみられた。組織学的には胆管周囲の2mm大の動脈の中膜平滑筋に軽度の空胞変性とその近傍での破綻を認め，また隣接した割面では3mm大の動脈に解離がみられた。限局性病変で動脈硬化性変化は目立たないことを考慮すると，微小な病変で確定診断は難しいがsegmental arterial mediolysisによる動脈の破綻が疑われる所見と考えられた。

キーワード: cystic artery, liver, segmental arterial mediolysis, subserosal hematoma

Subserosal hematoma of the liver probably due to segmental arterial mediolysis of cystic artery:an autopsy case

Shojiro Ichimata^1,2, Kunihiko Shingu¹, Kenji Sano¹, and Hiroyuki Kanno²

¹Department of Laboratory Medicine, Shinshu University Hospital
²Department of Pathology, Shinshu University School of Medicine

（論文受付　2015年5月21日）

（採用決定　2015年9月9日）