総  説

早期肝細胞癌と前癌病変の病理

尾島 英知   坂元 亨宇

(慶應義塾大学医学部病理学教室)

要旨: 近年の画像診断の進歩により,前癌病変や早期肝細胞癌に対する的確な病理診断を病理医に求める要求度は高まっていると考えられる。しかし,軽度異型結節から早期肝細胞癌に至るまでの組織学的変化は,それぞれの病変が混在·移行していることもあることから,必ずしもクリアカットに診断できるわけではない。本稿では,臨床像と乖離のない病理診断を行うために把握すべき肝臓の境界病変の病理学的基本事項と,我々が提唱する早期肝細胞癌の新たな分類に関して解説を行う。

キーワード: 肝細胞癌,異型結節,早期肝細胞癌,High grade early hepatocellular carcinoma, CAP2


Pathological feature of early hepatocellular carcinoma and precancerous lesion

Hidenori Ojima and Michiie Sakamoto

Department of Pathology, Keio University School of Medicine

(論文受付 2015年9月24日)

(採用決定 2015年10月7日)