症例報告
腎mucinous tubular and spindle cell carcinomaの1例
松田 玲奈 伊藤真理子 八代 真一
村上 洋平 鹿野 哲 佐々木 豊
(北海道勤医協中央病院病理診断科)
要旨: 60代女性の右腎下極に発生したmucinous tubular and spindle cell carcinoma (MTSC)の1例を経験した。一部腎洞内と腎外へ突出する20×20×17mm大の境界明瞭な白色調の腫瘍であった。組織学的には,粘液間質を背景に腫瘍細胞が細長い管状構造をとり増殖し,索状や乳頭状構造も認めた。紡錘形細胞の増殖もみられ,管状構造と境界不明瞭に移行している部分もあった。腫瘍細胞の核異型は軽度で,分裂像は乏しく,一部に砂粒体や泡沫組織球·リンパ球浸潤を伴っていた。免疫組織化学では,α-methylacyl-CoA racemase (AMACR)やCK7が陽性,CD10やvillinは陰性であり,MTSCとして合致する結果であった。典型例と考えられた。
キーワード: kidney, mucinous tubular and spindle cell carcinoma (MTSC), papillary renal cell carcinoma (papillary RCC)
A case of renal mucinous tubular and spindle cell carcinoma
Reina Matsuda, Mariko Ito, Sinichi Yashiro, Yohei Murakami, Satoshi Kano, and Yutaka Sasaki
Department of Pathology, Hokkaido Kin-ikyo Chuo Hospital
(論文受付 2015年2月26日)
(採用決定 2015年4月23日)