症例報告

前胸部に発生したandrogen receptor陽性の異所性過誤腫性胸腺腫の1例

内村　公美¹　　　西田　陽登²　　　荒金　茂樹²
駄阿　　勉²　　　横山　繁生²

（¹大分大学医学部医学科4年，²同　診断病理学講座）

要旨: 60代女性の右前胸部に発生した異所性過誤腫性胸腺腫の1例を報告する。組織学的には，境界明瞭な充実性腫瘍で，異型性に乏しい紡錘形細胞，上皮細胞，脂肪組織が混在する3相性の腫瘍であった。脂肪組織内には，上皮細胞と紡錘形細胞が索状·網状パターンを示し，syringofibroadenomaに類似していた。免疫染色で，紡錘形細胞はcytokeratin，α-smooth muscle actin，CD34が陽性，紡錘形細胞と上皮細胞は共にandrogen receptor陽性であった。本腫瘍が男性に優位であることや，思春期以降に腫瘍の増大を認める症例が多いこととの関連が示唆される。

キーワード: precordium, ectopic hamartomatous thymoma, immunohistochemistry, androgen receptor, case report

A case of androgen receptor positive ectopic hamartomatous thymoma of the precordial region

Kumi Uchimura¹, Haruto Nishida², Motoki Arakane², Tsutomu Daa², and Shigeo Yokoyama²

¹School of Medicine and ²Department of Diagnostic Pathology, Faculty of Medicine, Oita University

（論文受付　2014年10月29日）

（採用決定　2015年2月17日）