症例報告

重複腸管から発生した腹膜偽粘液腫の1例

三栖賢次郎^1,2　　　近江　　亮²　　　立野　正敏¹　　　柳内　　充³　　　青木　直子⁴

（¹釧路赤十字病院病理診断科，²同　外科，³市立札幌病院病理診断科， ⁴旭川医科大学病理学講座）

要旨: 40代男性。急激な下腹部痛を主訴に来院し，画像で腹膜偽粘液腫が疑われ手術が施行された。腹腔内には正中部に膿瘍形成があり穿刺で粘液貯留を認めた。モリソン窩に粘液貯留があり腹膜偽粘液腫であった。肉眼上膿瘍は回盲部と連続しているため，虫垂が原発と考えられた。しかし，組織学的には虫垂は保たれ，回腸裏側に別個の腸管組織が存在し，その腸管内に粘液産生の高度な腺腫が観察された。粘液は周辺の結合織へ漏出し，腹膜偽粘液腫を生じていた。重複腸管，腹膜偽粘液腫は稀な疾患で，重複腸管から発生した腹膜偽粘液腫の報告は少ないため，報告する。

キーワード: ileum, pseudomyxoma peritonei, mucinous adenoma, intestinal duplication

A case of pseudomyxoma peritonei originating from an intestinal duplication

Kenjiro Misu^1,2, Makoto Oumi², Masatoshi Tateno¹, Mitsuru Yanai³, and Naoko Aoki⁴

¹Department of Pathology, ²Department of Surgery, Kushiro Red Cross Hospital
³Department of Pathology, Sapporo City General Hospital
⁴Department of Pathology, Asahikawa Medical University

（論文受付　2014年9月29日）

（採用決定　2014年12月24日）