症例報告

直腸原発滑膜肉腫の1例

倉重真沙子¹　　　露木　敦士¹　　　渡辺　緑子¹　　　桐山　理美¹　　　藤野　雅彦²　　　伊藤　雅文¹

（¹名古屋第一赤十字病院病理部，²同　細胞診分子病理診断部）

要旨: 30代女性の直腸に発生した滑膜肉腫の1例を報告する。本症例は，組織学的には，典型像に近い二相性滑膜肉腫の像を呈し，免疫組織学的には，CK7−， AE1+AE3−， EMA+， bcl-2+， S-100+， CD56+， CD99−であった。初発時は確定診断に至らなかったが，術後10年目に肺に転移し，転移巣に対するFISHでSS18遺伝子の解離シグナルを検出し，滑膜肉腫と診断した。消化管原発の滑膜肉腫は極めて珍しく，我々が検索した限りでは，直腸発生例の報告は本症例以外には1例あるのみである。

キーワード: rectum, synovial sarcoma, FISH

A case of synovial sarcoma of the rectum

Masako Kurashige¹, Atsushi Tsuyuki¹, Midoriko Watanabe¹, Ayami Kiriyama¹, Masahiko Fujino², and Masafumi Ito¹

Departments of ¹Pathology and ²Cytology and Molecular Pathology, Japanese Red Cross, Nagoya First Hospital

（論文受付　2014年7月2日）

（採用決定　2014年11月14日）