原　　著

パラフィンブロックの長期保存と採取試料の固定までの時間が与えるKi-67 免疫染色，DNAとRNA への影響

佐藤　正明¹　　　小嶋　基寛¹　　　永妻　晶子¹　　　中村　優香¹　　　福田　幸子¹　　　斉藤　典男²　　　落合　淳志¹

（¹国立がん研究センター東病院臨床開発センター臨床腫瘍病理分野，²同　大腸外科）

要旨: 近年既往のパラフィン包埋組織（FFPE） が再発時の治療方針決定に利用されるようになり，初発の組織が採取された後に再発するまでは年単位の時間が経過することも多い一方，FFPEの長期保存が与える経時的な質の劣化に関する報告は少ない。今回，各年代のFFPEと組織採取から固定までの時間におけるKi-67とDNA ，RNA を比較検討した。結果，長期保存FFPE の核酸はPCR 増幅成功率の低下がみられるため，3 年以内の新しい検体を用い，固定までの時間は組織学的な変化が観察される6時間以内が望ましいと考えられた。

キーワード: fixation, immunohistochemistry, DNA, RNA, formalin-fixed and paraffin-embedded

Effect of Long-term storage of formalin-fixed and paraffin-embedded block, and effect of time before tissue fixation to histology, Ki-67, DNA and RNA analyses

Masaaki Sato¹, Motohiro Kojima¹, Akiko Nagatsuma¹, Yuka Nakamura¹, Sachiko Fukuda¹, Norio Saito², and Atsushi Ochiai¹

¹Division of Pathology, Research Center for Innovative Oncology and ²Colorectal and Pelvic Surgery Division, National Cancer Center Hospital East

（論文受付　2014年8月19日）

（採用決定　2014年11月17日）