症例報告

脳幹部原発の悪性リンパ腫の1剖検例

石川　　洸¹　　　有廣　光司²　　　城間　紀之²　　　倉重　毅志²

（¹広島大学医学部医学科，²広島大学病院病理診断科）

要旨: 60代男性。死亡約4ケ月前に項部ないし両肩に知覚異常が出現し，死亡約3ケ月前には排尿障害を併発した。剖検時，肉眼的に橋から頸髄にかけて境界不明瞭で約9×1.5×1cm大，灰白色充実性の腫瘤を認めた。組織学的には小型ないし中等大の異型リンパ球様細胞の瀰漫性浸潤よりなる腫瘍組織であり，免疫組織化学的にCD20（+），CD79a（+），CD10（+），BCL6（+），MUM-1（−），CD5（−），CD3（−）であり，diffuse follicular lymphomaの像と見做された。リンパ腫細胞の浸潤増殖は中枢神経に限局していた。脳原発性悪性リンパ腫との関連が指摘されるX-box binding protein 1（XBP-1）が本例でも陽性であった。

キーワード: brain stem, malignant lymphoma, autopsy, diffuse follicular lymphoma, x-box binding protein 1

An autopsy case of primary central nervous system lymphoma of brain stem

Akira Ishikawa¹, Koji Arihiro², Noriyuki Shiroma², and Takashi Kurashige²

¹Faculty of Medicine Hiroshima University
²Department of Anatomical Pathology, Hiroshima University Hospital

（論文受付　2013年10月9日）

（採用決定　2014年10月14日）