症例報告

腟のspindle cell epitheliomaの1例

小川 弥生1,3   高木 芳武1   近藤 信夫1   逸見 博文2

1GeneticLab病理解析センター,2KKR札幌医療センター斗南病院·生殖内分泌科,3NPO法人北海道腎病理センター)

要旨: 44歳女性で,腟部に15mm大の隆起性病変を認め,精査目的で摘出術が行われた。肉眼的には境界明瞭な病変で,病理組織学的には真皮主体に紡錘形から類円型の細胞が硝子様の基質をともなって増生する像や,扁平上皮化生などの上皮様成分が混在してみられた。これらの多彩な組織像は,唾液腺などにみられるmixed tumorに類似していた。免疫組織化学的には,これらの細胞はびまん性に抗keratin染色陽性,抗CD10染色陽性,抗ER, PGR染色陽性であった。以上の所見から,腟で報告されているso-called mixed tumor/spindle cell epitheliomaに合致する所見であった。腟のspindle cell epitheliomaは,唾液腺などのmixed tumor類似の形態を示すことから,so-called mixed tumorとも称されるが,他部位のmixed tumorは筋上皮細胞由来とされるのに対し,spindle cell epitheliomaは筋上皮細胞のマーカーは陰性あるいは部分的な発現であることが多い。本例も既報告と類似した染色結果を呈し,spindle cell epitheliomaと考える。

キーワード: vagina, spindle cell epithelioma, mixed tumor


A case of vaginal spindle cell epithelioma

Yayoi Ogawa1,3, Yoshitake Takagi1, Nobuo Kondo1, and Hirofumi Henmi2

1Pathology Center, GeneticLab Co., Ltd.
2Department of Reproductive Endocrinology, Tonan Hospital
3Hokkaido Renal Pathology Center

(論文受付 2014年5月8日)

(採用決定 2014年9月26日)