症例報告

成熟奇形腫に神経芽腫を発生した卵巣腫瘍の1例

阿部江利子^1,4　　　鈴木　高祐¹　　　楊　　　陽^1,4　　　李　　治平¹　　　宇野美惠子¹　　　福永　真治²　　　田中　祐吉³　　　笹野　公伸^1,4

（¹聖路加国際病院病理診断科，²東京慈恵会医科大学第三病院病理部，³神奈川県立こども医療センター病理科，⁴東北大学医学部病理診断学分野）

要旨: 症例は15歳の女性。腰痛精査で左卵巣に13cm大の腫瘤を認め切除術が施行された。腫瘍は嚢胞を伴った充実性腫瘍で，主体は小型円形細胞の密な増殖に神経節細胞様細胞が混在している像を示し，NSE，chromogranin A，synaptophysinが陽性で神経芽腫が考えられた。神経芽腫に隣接して，皮膚と付属器，脂肪組織，骨などがみられる成熟奇形腫が認められた。脈管侵襲を伴い，傍大動脈リンパ節に転移を認め，後日骨髄転移も判明した。成熟奇形腫に体細胞型腫瘍が合併する頻度は低く，神経芽腫を合併した稀な1例を経験したので報告する。

キーワード: ovary, mature cystic teratoma, neuroblastoma, adolescent

A case of neuroblastoma arising in a mature cystic teratoma of the ovary

Eriko Abe^1,4, Koyu Suzuki¹, Yang Yang^1,4, Li Chih-Ping¹, Mieko Uno¹, Masaharu Fukunaga², Yukichi Tanaka³, and Hironobu Sasano^1,4

¹Department of Pathology, St.Luke's International Hospital, Tokyo, Japan
²Department of Pathology, The Jikei University Daisan Hospital, Tokyo, Japan
³Department of Pathology, Kanagawa Children's Medical Center, Kanagawa, Japan
⁴Department of Pathology, Tohoku University Hospital, Sendai, Japan

（論文受付　2014年1月16日）

（採用決定　2014年6月3日）