症例報告

鰓性嚢胞内に同時に認められた扁平上皮癌と甲状腺乳頭癌の1例

柳川　直樹　　　緒形　真也　　　田村　　元

（山形県立中央病院病理診断科）

要旨: 82歳，男性。幼少時より右頸部に無痛性の腫瘤を自覚していたが放置していた。最近になり腫瘤の増大を自覚し受診となった。右頸部に無痛性の約4cmの腫瘤を触知した。CTでは右胸鎖乳突筋と右内頸静脈の間に径約3.5cmで辺縁不整，造影効果を示し嚢胞成分を含む腫瘍性病変が認められた。診断治療を兼ねて腫瘤切除術が行われた。病理組織学的に形態的に異なった2つの腫瘍が認められた。1つは扁平上皮癌で鰓性嚢胞から発生したいわゆる鰓性癌と考えられたが，もう1つは甲状腺乳頭癌であり，転移か原発か鑑別困難であった。

キーワード: branchial cleft cyst, squamous cell carcinoma, papillary carcinoma of thyroid

Squamous cell carcinoma and papillary carcinoma of thyroid coexisting independently in the branchial cleft cyst:report of a case

Naoki Yanagawa, Shin-ya Ogata, and Gen Tamura

Department of Diagnostic Pathology, Yamagata Prefectural Central Hospital

（論文受付　2014年2月7日）

（採用決定　2014年5月20日）