総　　説

唾液腺腫瘍の病理診断─最近の進歩と診断の実際─

長尾　俊孝

（東京医科大学人体病理学分野）

要旨: 唾液腺腫瘍は比較的まれではあるが，多彩な組織像を呈し，診断に難渋することが少なくない。しかし，組織型の判定は予後の予測や治療方針の決定に直結するため，病理診断は極めて重要である。近年，唾液腺腫瘍においても，新たな組織型や亜型の提唱，病理診断に有用な免疫組織化学的マーカーの出現，染色体の転座によって形成される腫瘍特異的な融合遺伝子の発見，などの病理学的新知見が数多く報告されている。特に融合遺伝子の同定は，唾液腺癌の病理診断においてのみならず，予後判定や将来の治療面においても意義を持つと考えられる。

キーワード: salivary gland tumor, pathological diagnosis, immunohistochemistry, fusion gene

Pathological diagnosis of the salivary gland tumors:recent developments and its practical approach

Toshitaka Nagao

Department of Anatomic Pathology, Tokyo Medical University

（論文受付　2014年6月30日）

（採用決定　2014年7月10日）