症例報告

胸腺癌のマーカー分子 を発現した胸腺腫type B3の1例

仲山美沙子¹　　　尾柳　大樹²　　　竹村しづき³　　　馬野　真次⁴　　　林　　裕司⁴　　　吉田　章子⁴　　　石垣　宏仁¹　　　伊藤　　靖¹　　　小笠原一誠¹　　　杉原　洋行⁵

（¹滋賀医科大学病理学講座疾患制御病理学部門，²社会保険滋賀病院呼吸器外科，³栗東指月病理診断科，⁴社会保険滋賀病院検査部病理検査室，⁵滋賀医科大学病理学講座分子診断病理学部門）

要旨: 70代男性の前縦隔に発生した胸腺腫瘍について，腫瘍の大部分を占める大結節で胸腺癌にみられるマーカー分子を発現していたが，形態的，機能的には胸腺腫type B3に相当する症例を経験したので報告する。大結節の腫瘍細胞はCD5，bcl-2，c-kitがびまん性に陽性，クロモグラニンAおよびシナプトフィジンは散在性に陽性で，胸腺癌の特徴を示した。一方で，腫瘍細胞の異型は軽度で，腫瘍細胞間に介在するリンパ球はCD99陽性の未熟リンパ球であった。近年，遺伝子解析により胸腺腫type B3と胸腺癌はゲノムレベルでは系譜上連続していることが報告されている。本症例では遺伝子発現レベルでも胸腺腫type B3と胸腺癌が連続していることが免疫組織化学的に示唆された。

キーワード: thymus, type B3 thymoma, thymic carcinoma, immunohistochemistry

A case of type B3 thymoma with marker molecules of thymic carcinoma

Misako Nakayama¹, Hiroki Oyanagi², Shizuki Takemura³, Shinji Umano⁴, Yuji Hayashi⁴, Akiko Yoshida⁴, Hirohito Ishigaki¹, Yasushi Itoh¹, Kazumasa Ogasawara¹, and Hiroyuki Sugihara⁵

Departments of Pathology, Division of ¹Pathology and Disease Regulation and ⁵Molecular and Diagnostic Pathology, Shiga University of Medical Science
Departments of ²Respiratory Surgery and ⁴Laboratory of Pathology, Social Insurance Shiga Hospital
³Ritto-Shizuki Pathology Clinic

（論文受付　2013年11月29日）

（採用決定　2014年3月26日）