症例報告

化学療法後の再発で未分化転化し，軟骨分化を示した悪性黒色腫の1例

黒瀬　　望¹　　　北山明日香²　　　望月　　隆²　　　松原　藤継³　　　中田　聡子¹　　　木下英理子¹　　　福島　万奈¹　　　湊　　　宏¹　　　野島　孝之¹

（¹金沢医科大学臨床病理学，²同　皮膚科学，³辰口芳珠記念病院病理）

要旨: 68歳，男性。右上腕部皮膚の悪性黒色腫の診断で，右腋窩リンパ節郭清術，化学療法が施行された。8ケ月後，右腋窩リンパ節と右腋窩部に局所再発をきたし，全身精査にて肺，縦隔リンパ節の転移·再発が認められた。化学療法を変更し，1年後，肺，縦隔の転移巣は縮小·消失したが，腋窩部腫瘤は径9cm大まで増大した。同部の切除術が施行されるも腫瘍細胞にメラニン色素はみられず，粘液状基質を背景に，軟骨肉腫様胞巣を伴った異型細胞の増殖が認められた。鑑別診断として，骨外性粘液型軟骨肉腫と間葉型軟骨肉腫も考えられ，EWSR1のFISH法，RT-PCRによるHEY1-NOCA2変異遺伝子の検索を行い，これらは除外された。全割標本にて腫瘤辺縁部に，メラニン色素を貪食したマクロファージの集簇があり，悪性黒色腫細胞のリンパ節転移巣も認められ，最終的に悪性黒色腫と診断した。化学療法抵抗性の未分化な腫瘍細胞が異分化をきたしたと考えられた。

キーワード: malignant melanoma, amelanotic, chondroid differentiation, SOX9, chemotherapy

A case report of post-chemotherapeutic dedifferentiated malignant melanoma with chondroid differentiation at the time of recurrence

Nozomu Kurose¹, Asuka Kitayama², Takashi Mochizuki², Fujitsugu Matsubara³, Satoko Nakada¹, Eriko Kinoshita¹, Mana Fukushima¹, Hiroshi Minato¹, and Takayuki Nojima¹

Departments of ¹Pathology and Laboratory Medicine and ²Dermatology, Kanazawa Medical University
³Department of Pathology, Tatsunokuchi Houju Memorial Hospital

（論文受付　2013年9月30日）

（採用決定　2014年2月13日）