総　　説

腹膜悪性中皮腫の病理

武島　幸男¹　　　櫛谷　　桂¹　　　Amatya V. Jeet¹　　　井内　康輝²

（¹広島大学大学院医歯薬保健学研究院病理学研究室，²（株）病理診断センター）

要旨: 過去の大量のアスベスト（石綿）の使用により，悪性中皮腫の経年的な増加が指摘されている。中皮腫は，胸膜，腹膜，心膜，精巣鞘膜に発生するが，腹膜に発生する中皮腫は比較的稀であること，特に女性ではアスベスト曝露とは関連しない例も存在すること，女性生殖器に発生する種々の癌との形態学的な類似性から，診断困難な例が存在する。腹膜中皮腫の多くは上皮型であるが，きわめて多彩な像を呈するため鑑別診断も多岐にわたる。本稿では，腹膜中皮腫の病理組織像，免疫組織化学的所見，および，鑑別診断について概説し，中皮腫の診断精度の向上の一助となることを期待したい。

キーワード: mesothelioma, peritoneum, asbestos, serous carcinoma, reactive mesothelial hyperplasia

Pathology of peritoneal malignant mesothelioma a review

Yukio Takeshima¹, Kei Kushitani¹, Amatya. V. Jeet¹, and Kouki Inai²

¹Department of Pathology, Graduate School of Biomedical & Health Sciences, Hiroshima University
²Pathological Diagnostic Center, Inc.

（論文受付　2013年11月11日）

（採用決定　2013年12月24日）