症例報告

悪性黒色腫との鑑別を要したpigmented mammary Paget's diseaseの1例

桑原　祐樹¹　　　岩永　　聰¹　　　黒濱　大和¹　　　梅崎　　靖¹　　　三原　裕美¹　　　大仁田亜紀²　　　石川　博士²　　　宿輪　哲生²　　　伊東　正博¹

（¹国立病院機構長崎医療センター病理診断科，²同　皮膚科）

要旨: 高度のメラニン沈着を伴う乳房Paget病，いわゆるpigmented mammary Paget's diseaseは極めて稀な疾患である。今回，我々は58歳女性の左乳房に発生し，臨床的に悪性黒色腫が疑われ，生検にて診断された本疾患を経験したので文献的考察を加え報告する。報告例は自験例も含めて18例であった。左乳頭部の変形と衛星病変を伴う黒色調腫瘤で，画像的に胸壁浸潤と両腋窩リンパ節転移が指摘された。腫瘍生検にて表皮から皮下脂肪識にかけて大型類円形の異型細胞浸潤と腫瘍間に樹脂状に増殖するメラノサイトが観察され，免疫組織化学的に，CK7陽性，GCDFP15陽性，HMB45陰性であった。

キーワード: mammary gland, pigmented mammary Paget’s disease, melanocyte, malignant melanoma

A case of pigmented mammary Paget’s disease mimicking malignant melanoma

Yuki Kuwabara¹, Akira Iwanaga¹, Hirokazu Kurohama¹, Yasushi Umezaki¹, Yumi Mihara¹, Aki Onita², Hiroshi Ishikawa², Tetsuro Shukuwa², and Masahiro Ito¹

Departments of ¹Pathology and ²Dermatology, National Nagasaki Medical Center

（論文受付　2013年5月29日）

（採用決定　2013年9月9日）