症例報告

下部尿管に発生した栄養膜細胞への分化を伴う浸潤性尿路上皮癌の1例

松岡　未紗¹　　　鈴木　　文²　　　伊古田勇人²　　　横尾　英明²　　　後藤　優典³　　　平戸　純子³　　　加藤　春雄⁴

（¹群馬大学医学部医学科，²同　大学院医学系研究科病態病理学分野，³群馬大学医学部附属病院病理部，⁴同　泌尿器科）

要旨: 56歳男性に発症した左下部尿管原発の栄養膜細胞への分化を伴う浸潤性尿路上皮癌の1例を報告する。肉眼的には乳頭型有茎性の隆起性病変で，組織学的には通常の高異型度浸潤性尿路上皮癌に加えて，全体の約1/3において奇怪な多核巨細胞や淡明な細胞質を有する小型敷石状細胞からなる領域がみられ，栄養膜細胞への分化が示唆された。腫瘍は所々に壊死を伴い，尿管の固有筋層に浸潤が及んでいた。免疫染色でヒト絨毛ゴナドトロピン，ウロプラキンIIIが一部の腫瘍細胞に陽性であった。尿管原発の同腫瘍は極めて稀である。

キーワード: invasive urothelial carcinoma with trophoblastic differentiation, ureter, human chorionic gonadotropin, uroplakin III, cytology

A case of invasive urothelial carcinoma with trophoblastic differentiation of the lower ureter

Misa Matsuoka¹, Aya Suzuki², Hayato Ikota², Hideaki Yokoo², Yusuke Goto³, Junko Hirato³, and Haruo Kato⁴

¹Gunma University Faculty of Medicine
²Department of Human Pathology, Gunma University Graduate School of Medicine
Departments of ³Pathology and ⁴Urology, Gunma University Hospital

（論文受付　2013年5月21日）

（採用決定　2013年9月9日）