症例報告

高齢女性の胃壁に発症したALK遺伝子転座を伴う炎症性筋線維芽細胞性腫瘍の1例

福正　りさ¹　　　梶本　和義¹　　　三木　生也²　　　前川　陽子³　　　田原紳一郎¹　　　狛　雄一朗¹　　　佐久間淑子¹

（¹兵庫県立がんセンター病理診断科，²同　消化器内科，³同　乳腺外科）

要旨: 高齢女性の胃壁に発生した炎症性筋線維芽細胞性腫瘍（inflammatory myofibroblastic tumor:IMT）を報告する。症例は65歳女性。乳癌治療後に発見された径15mmの胃壁腫瘤に対し内視鏡的粘膜下層剥離術（ESD）を行った。組織学的に，高度のリンパ形質細胞性の細胞浸潤を背景にα-SMA陽性の筋線維芽細胞様の細胞が増生した。鑑別疾患は炎症から腫瘍まで多岐に渡るが，特にIMTとIgG4関連疾患の鑑別を要した。免疫組織化学とFISH検査からALK遺伝子転座のあるIMTと診断したが，本例はIgG4陽性関連疾患の特徴（高齢，IgG4/IgG=46.7%）を併せ持ち，ALKの所見がなければ診断は困難であった。本例のようにIgG4関連疾患とIMTが鑑別に挙がる場合は，両疾患の特徴が重複する可能性を念頭に入れる必要がある。

キーワード: stomach, inflammatory myofibroblastic tumor（IMT）, IgG4

A case of with ALK-positive inflammatory myofibroblastic tumor of stomach

Risa Fukusho¹, Kazuyoshi Kajimoto¹, Ikuya Miki², Yoko　Maekawa³, Shinichiro Tahara¹, Yu-ichiro Koma¹, and Toshiko Sakuma¹

Departments of ¹Pathology, ²Gastroenterological Medicine, and ³Breast Surgery, Hyogo Cancer Center

（論文受付　2013年3月7日）

（採用決定　2013年5月28日）